電力と電力量
電力と電力量
「電化製品に書かれた『1000 W』は何を表しているの?」「電気の使用量に出てくる『kWh』とは、どう違うの?」
電力と電力量は名前がよく似ていますが、表しているものが違います。今回は、「電流・電圧・抵抗」で学んだ3つの量を手がかりに、電気のエネルギーについて考えてみましょう。
この記事でわかること
- 電力と電力量の違い
- 電圧・電流から電力を求める方法
- オームの法則と電力の関係
- W・J・Wh・kWhの意味と計算方法
電気のエネルギーは何に変わる?
「電流・電圧・抵抗」では、電池と豆電球を導線でつないだ回路を紹介しました。豆電球に電流が流れると、明るく光り、熱も出ます。これは、電池から供給された電気のエネルギーが、光や熱に変わっているためです。
エネルギーとは、物を動かしたり、温めたり、光らせたりするはたらきに関わる量です。電気ストーブでは主に熱に、扇風機では羽根を回す運動などに、電気のエネルギーが変わります。
「電流・電圧・抵抗」で紹介した、水車のたとえを思い出してみましょう。水は水車へエネルギーを渡して回しますが、水そのものがなくなるわけではありません。豆電球でも、光や熱に変わるのはエネルギーであり、電流が使い切られるわけではありません。枝分かれのない回路では、豆電球に入る電流と出ていく電流の大きさは同じです。

電力ってなに?
同じ時間でも、電気のエネルギーを少しずつ使う機器と、たくさん使う機器があります。この電気のエネルギーを使う速さを表す量が、電力です。より正確には、電気エネルギーが光・熱・運動など別の形のエネルギーへ変換される速さを表します。
電力の記号には P、単位にはワット[W]を使います。また、エネルギーの量の単位はジュール[J]です。
1 W = 1 J/s
J/s は「1秒あたり何Jか」という意味です。
たとえば、電力が10 Wなら、1秒間に10 Jの電気エネルギーを使います。20 Wなら、1秒間に20 Jです。つまり、20 Wの機器は10 Wの機器の2倍の速さで、電気エネルギーを使っています。
ここでいう「使う」は、エネルギーが消えてなくなるという意味ではありません。光や熱、運動など、別の形に変わることを指します。機器が使う電力を消費電力ともいいます。
電圧と電流から電力を求めよう
では、回路の電力はどのように求めればよいのでしょうか。ここでは、電圧と電流が一定の直流回路を考えます。
「電流・電圧・抵抗」では、電流は「1秒間にどれだけの電荷が通るか」を表す量だと説明しました。電圧は「2点の間の電位の差」で、エネルギーに注目すると、1 Cの電荷あたりに受け渡すエネルギーに対応します。
1 V = 1 J/C
J/C は「電荷1 Cあたり何Jか」という意味です。
たとえば、抵抗の両端の電圧が6 Vなら、電荷1 Cあたり6 Jのエネルギーが受け渡されます。この抵抗では、その電気エネルギーが熱に変わります。
その抵抗を流れる電流が2 Aなら、1秒間に2 Cの電荷が通ります。つまり、2 A = 2 C/sです。電荷1 Cあたりのエネルギーに、1秒間に通る電荷の量をかけてみましょう。
6 J/C × 2 C/s = 12 J/s = 12 W
1 Cあたり6 J、それが1秒間に2 C通るので、1秒間に12 Jの電気エネルギーが熱に変わります。単位でも、J/CとC/sをかけるとCが打ち消し合い、J/s、つまりWになります。このように、電圧と電流をかけると、1秒あたりのエネルギーである電力が求められます。
P = V × I
P:電力[W] V:負荷の両端の電圧[V] I:その負荷を流れる電流[A]
つまり、電力は、電圧と電流をかけると求められます。計算するときは、「どの負荷の電力を求めるのか」を決め、その負荷にかかる電圧と、そこを流れる電流を使います。
例1 電圧と電流から電力を求める
ある抵抗の両端の電圧が12 V、そこを流れる電流が0.5 Aのとき、消費電力を求めましょう。
P = V × I = 12 V × 0.5 A = 6 W
この抵抗では、1秒間に6 Jの電気エネルギーが熱に変わります。
この記事では、電圧と電流が一定の直流回路を扱います。交流回路の電力については、交流を学ぶ記事で改めて説明します。
オームの法則とつなげてみよう
電圧と電流の両方がわからなくても、抵抗と、電圧または電流のどちらか一方がわかれば、電力を求められることがあります。オームの法則 V = I × R を、電力の式 P = V × I と組み合わせると、電力を別の形でも表せます。
電流と抵抗がわかるとき
P = V × I の V を I × R に置き換えると、P = (I × R) × I となります。
P = I² × R
I² は I × I のことです。I は電流[A]、R は抵抗[Ω]で、P は電力[W]になります。
たとえば、3 Ωの抵抗に2 Aが流れるとき、P = 2 × 2 × 3 = 12 Wです。
電圧と抵抗がわかるとき
P = V × I の I を V / R に置き換えると、P = V × (V / R) となります。
P =
V² は V × V のことです。V は電圧[V]、R は抵抗[Ω]です。
同じ3 Ωの抵抗に6 Vをかけると、P = 6 × 6 ÷ 3 = 12 Wです。先ほどの例と答えが一致します。
これらは別々の現象を表す式ではありません。電力の式にオームの法則を組み合わせたものです。わかっている量に合わせて使い分けましょう。
抵抗が大きいほど、電力も大きくなる?
この関係は、何を一定にするかで変わります。電圧を6 Vで一定にすると、3 Ωでは12 W、6 Ωでは6 Wです。抵抗を大きくすると電流が小さくなり、電力も小さくなります。
一方、電流を2 Aで一定にすると、3 Ωでは12 W、6 Ωでは24 Wです。この場合は、抵抗を大きくすると必要な電圧も大きくなり、電力は大きくなります。
電力量ってなに?
電力がエネルギーを使う速さなら、電力量は、ある時間に使った電気エネルギーの合計です。同じ電力で使い続ければ、使用時間が長いほど電力量は大きくなります。
たとえば、10 Wの機器は1秒間に10 Jを使います。3秒間なら、10 Jずつを3回分合わせて30 J。5秒間なら50 Jです。
E = P × t
E:電力量[J] P:電力[W] t:時間[s]
電力が一定のときの式です。この記事では、電力量の記号に E を使います。
この式は、「1秒あたりに使う量 × 秒数 = 使った合計量」を表しています。電力と電力量の違いは、「進む速さ」と「進んだ距離」の関係に似ています。同じ速さでも、長く進むほど距離が増えるように、同じ電力でも、長く使うほど電力量が増えます。
例2 秒で計算して、Jで表す
6 Wの抵抗で、2分間に使う電力量を求めましょう。電力は一定とします。
まず、時間を秒に直します。
t = 2 × 60 = 120 s
E = P × t = 6 W × 120 s = 720 J
Wと秒をかけたので、答えの単位はJです。
抵抗で電気エネルギーが熱に変わるとき、発生する熱をジュール熱といいます。この例では720 Jの電気エネルギーが熱に変わります。
Wh・kWhの使い方
電化製品を使う時間は、秒よりも「何時間」と表す方が便利なことがあります。そこで、電力量の単位には、Jのほかにワット時[Wh]やキロワット時[kWh]も使います。
1 Whは、1 Wの電力で1時間使ったときの電力量です。hは時間(hour)を表します。WhはWとhのかけ算であり、「1時間あたり」という割り算ではありません。
- 電力[W]× 時間[s] → 電力量[J]
- 電力[W]× 時間[h] → 電力量[Wh]
- 電力[kW]× 時間[h] → 電力量[kWh]
式はどれも E = P × t です。使う時間の単位によって、答えの電力量の単位が変わります。1時間は3600秒なので、1 Wh = 3600 Jです。また、k(キロ)は1000倍を表すため、1 kW = 1000 W、1 kWh = 1000 Whとなります。
例3 30分使ったときの電力量
消費電力が1000 Wで一定の電気ヒーターを30分間使ったとします。電力量をWhとkWhで求めましょう。
30分 = 30 ÷ 60 = 0.5 h
E = 1000 W × 0.5 h = 500 Wh
500 Wh ÷ 1000 = 0.5 kWh
最初に1000 Wを1 kWに直して、1 kW × 0.5 h = 0.5 kWh と計算しても同じです。
30分を「0.3時間」としないようにしましょう。1時間は60分なので、分を時間に直すときは60で割ります。また、実際の機器では、設定や自動運転によって消費電力が変わることがあります。電力が変わる場合は、各時間帯の電力量を求めて足し合わせます。
電力が大きい方が、電力量も必ず大きい?
使用時間が同じなら、電力が大きい方が電力量も大きくなります。ただし、使用時間が違えば、電力だけでは比べられません。
たとえば、1000 Wを0.5時間使うと500 Wh、500 Wを2時間使うと1000 Whです。この場合、電力が小さい500 Wの方が、使った電力量は大きくなります。
確認問題に挑戦
最後に、意味と計算を確かめましょう。どの問題も、指定した電力や電圧は使用中に変わらないものとします。答えは「答えと解説」を開くと読めます。
確認問題1 電力と電力量の違い(初級)
① 1秒あたりに使う電気エネルギーを表すのは、電力・電力量のどちらですか?
② 20 Wの機器を3時間使いました。電力量は何Whですか?
答えと解説
① 電力です。エネルギーを使う速さを表し、単位はWです。
② E = 20 W × 3 h = 60 Whです。時間をhで計算しているので、答えはJではなくWhになります。
確認問題2 電力から電力量へ(標準)
抵抗の両端に直流の12 Vがかかり、0.5 Aの電流が流れています。
① この抵抗の消費電力は何Wですか?
② 5分間に使う電力量は何Jですか?
答えと解説
① P = V × I = 12 × 0.5 = 6 Wです。
② 5分 = 300 s なので、E = 6 W × 300 s = 1800 Jです。先に電力を求め、次に使用時間をかけます。
確認問題3 抵抗と使用時間を組み合わせる(発展)
6 Ωの抵抗に直流の12 Vをかけ、30分間使います。抵抗値は変わらないものとします。
① 消費電力は何Wですか?
② 電力量をWhとkWhで求めてください。
③ 同じ12 Vで抵抗だけを12 Ωに変え、同じ30分間使うと、電力量は元の何倍ですか?
答えと解説
① P = V² / R = 12 × 12 ÷ 6 = 24 Wです。I = 12 ÷ 6 = 2 A を先に求めて、P = 12 × 2 としても同じです。
② 30分 = 0.5 h より、E = 24 × 0.5 = 12 Wh。kWhに直すと、12 ÷ 1000 = 0.012 kWhです。
③ 新しい電力は12 × 12 ÷ 12 = 12 W、電力量は12 × 0.5 = 6 Whです。元の12 Whに対して、2分の1になります。電圧と使用時間が同じなので、抵抗が2倍になると電力量も半分です。
今回のまとめ
- 電力 P[W]は、1秒あたりに使う電気エネルギーの量です。
- 電圧と電流が一定の直流回路では、P = V × Iで電力を求めます。
- 抵抗の電力は、オームの法則と組み合わせると、P = I² × R = V² / Rとも表せます。
- 電力量 Eは、ある時間に使った電気エネルギーの合計です。電力が一定なら、E = P × tです。
- W × s はJ、W × h はWh、kW × h はkWhになります。
- 1 Wh = 3600 J、1 kWh = 1000 Whです。
まずは「電力は使う速さ、電力量は使った合計量」という違いを押さえましょう。そのうえで、電圧・電流・使用時間をひとつずつ確かめれば、式の意味も見えてきます。
